私は財閥系の大手で勤務しており、給料は安いが安定した生活を送っていました。
38歳で脱サラをして田舎暮らしを始めました。
その時子供は2人、幼稚園と小学校低学年。
安いと思っていた給料は実はとんでも無く恵まれたものだったと気づくのに時間はかかりませんでした。
田舎に移住して25年、私のささやかな経験が田舎で暮らしたいと考えている人の参考になれば幸いです。
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現実逃避で移住

私もこのパターンでした。
会社から遠く離れた場所にマンションを買った自分は、片道2時間近くの通勤に耐えられなくなっていました。
その時電車の吊広告でみた、長野県へのIターン募集の記事が頭にこびりつきました。
さらにその時期に職場移動があり、直属の上司と折り合いが悪かったことも背中を押しました。
このような状況に陥った人間は、田舎暮らしへの思いを理由にして、自らの行動を正当化しようとします。
それが現実逃避だと気付かずに。
上手く行かない原因は、自分の性格や資質、適応能力にあるわけで、田舎に住んだからといって良くなる訳ではありませんし、むしろ悪化する場合もあります。
私の場合は移住してから人間不信や鬱症状となって表れました。
世の中の情報を鵜吞みにする

田舎暮らしに興味が出てくると、ネットや雑誌などで田舎暮らしの情報を調べようとします。
私も早くからインターネットビジネス(ままごとのレベルですが)に関わったおかげで、マスコミ取材をいくつか受け、テレビや雑誌などでインターネットとは別に田舎暮らしについても取り上げられました。
でも出来上がった映像や出版された本を見ると、全然違ったものになっていました。
苦労話などはほとんどカット され、優雅に海岸線を犬と歩いている映像だとか、近所からおすそ分けされた野菜などの話などが盛り込まれています。この情報を見た人は、インターネットで稼いでのんびりと田舎で暮らしていけるという妄想を持つかも知れませんが、現実はそう甘くは無いです。
テレビは視聴率欲しさに、雑誌は売上欲しさに、ネットの記事はPV欲しさに読者が喜びそうな部分だけ取り上げているので、本気で田舎暮らしを考えているなら、情報は自分の足でとるぐらいの気持ちで行動したほうがいいでしょう。
直接現地へ行き、体験的に2、3日でもいいから住んでみるとか、その地域の集まりに積極的に参加してみるとか。
そうすると、その地域に自分が溶け込めるのか、あるいは自分の田舎で暮らしてみたいという気持ちが本物なのかが判断できるようになってきます。
私の失敗は現地に行って調べず、楽に手に入る情報を信じて会社を辞めてしまった事です。
住民と仲良くできると思っている

田舎暮らし礼賛の番組でよくあるパターンは、移住した人を地域ぐるみで歓迎し、農産物をもらったり農業を教えてもらったり、お茶の時間には近所から人が集まってくる・・
こんなの複数の条件が揃わないと無理な妄想でしかありません。
- 自分が地域に溶け込む努力を怠らない
- 地域に世話好きで裏表無く接してくれる住民がいる
- 過疎地である
他にも条件はありますが、概ねこの条件が必要だと思います。
1は人間そのものが好きでないと頑張っても続かない。
2は自分を引き入れてくれる先導者がいないと地域に入ってはいけないと思う。
3は現在すでに便利な時代で、田舎も都会と変わらない生活パターン、環境になってきているため、中途半端な田舎だとよそ者と関わらない風潮が出来上がっている。
今は近所の人と関わらないでも生活できるので、わざわざ「よそ者」の相手などしないという事です。
田舎の暮らしは変わらないと思っている

私が引っ越してきた時は、隣の家まで50mはあって全世帯でも10世帯ほどでしたから、普通にご近所のおつきあいはありました。
しかし、そのうち1軒の大地主が代替わりして、あたり一帯の土地を手放してから状況は一変しました。
新しく入ってくる人たちは、若くて小さな子どもがいて、共働きで忙しい世帯が9割を占めるようになり、目があっても挨拶もしないという居心地の悪い生活環境に変化しました。
現在、第一期に入ってきた若い世代の子どもたちが、マフラーを改造したバイクを乗り回しており、静かな生活は無くなりました。
妬み・嫉み・噂話

私がネットを使ってビジネスを始め、マスコミに紹介されるようになった頃、あらぬ噂が耳に入ってきました。
私の取り扱っている品が中国製だと、しかしこんな嘘の情報を流して何が楽しいのだろうとその時は思いましたが、長年住んでいる内に、こんなあらぬ噂で潰されていったよそ者をいくつかみるようになりました。
近隣の人達と話していて思う事は、話が大袈裟でいい加減、何の根拠も無いことをさも自分が体験したように話します。
最初の頃はそれが分からなくて、聞いてた話と違うことに気付かされた事が数限りなく思い出されます。
それは日常のつまらない話に多いわけですが、近所に出来た新しいお店の印象だとか、どこぞの人が浮気しているとか、あそこの家は新車買ったけどローンが大変らしいとかそんな類ですね。
人が何かで成功したりするのを非常にやっかむ傾向にあります。
よそ者は地域で飲食店などを開くと、本当にこの手の根拠なき噂がたち、1年経たずに閉店に追い込まれます。
携帯の普及により、さらに早く噂が広がるようになっているので困ったものです。
私もこの手の告げ口で、やっと手に入れた仕事を首になり、途方にくれた事があって、それ以来人間不信が強くなって現在まで続いています。
もう一度考え直してみよう

もしあなたが漠然と田舎暮らしを夢見ているのなら、一旦立ち止まって考えてみましょう。
人間は案外自分自身の事はよく分かっていません。
いきなり移住せずに、お試し移住で田舎暮らしに向いているかどうかを見極めることが必要です。
お試し移住のコツは、その土地で一番厳しい季節を選ぶことです。
あなたが北海道に移住を考えているなら、冬を選んで試しに暮らしてみることです。
今回の記事は失敗する理由なので、マイナスなことばかり書きましたが、数えきれないほどの良さがあることも事実です。
私自身は田舎暮らしを始めて良かったと思っています。
きれいな空気、多くの緑、美味しい食材、都会にいる時は嫌だった満員電車も熱帯夜もここにはありません。
でもムカデやマムシもいますし、イノシシだって猿だって出没します。(住む地域によりますが・・)
人生は短く一度だけ、実行せずに後悔するより一度自分の殻を破ることも大事だと思います。
しかし勇気と無謀は違いますから、ちゃんと計画を立てて、ダメだった場合の逃げ道を作っておくのが大切です。